OEM販売用オリジナル腕時計の製作事例
アパレルや革小物、アクセサリーなどのブランドでは、自社の世界観を反映させたオリジナル腕時計をOEMで製作する事例が増えています。
既製品を時計ブランドから仕入れる方法もありますが、ブランドのコンセプトにぴったり合うモデルを見つけるのは難しい場合があります。
そこで、理想のデザインを実現する手段としてOEMが選ばれるのです。
本記事では、実際にOEMを活用して製作されたオリジナル腕時計の事例を紹介します。
INDEX
OEMとは

OEMとは「Original Equipment Manufacturer(オリジナル・エクイップメント・マニュファクチャラー)」の略で、他社ブランドの製品を代わりに製造する仕組み、またはそのメーカーを指します。
例えば、あるブランドが自社名を冠した腕時計を販売したいと考えても、自社には製造設備や技術がない場合があります。
そこで登場するのがOEMです。
時計作りを専門とするメーカーに製造を委託し、完成した製品を自社ブランドとして販売するのです。
OEMの特徴は、ブランド側がデザインや仕様を決め、メーカーがそれに沿って製造を担う点にあります。
ODM(Original Design Manufacturing)のようにメーカーが企画から行うのとは異なり、ブランドのコンセプトを反映させやすい方法です。
OEMでオリジナル腕時計を製作する前に知っておきたいこと
OEMで腕時計を製作する前に、時計というアイテムの基本的な構造について、少しだけ触れておきたいと思います。
ネットショップなどでは「ケースサイズ30mm(※竜頭含まず)」といった表記を見かけますが、実際のところよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
時計業界では「ケース」は当然のように「本体部分」を指しますが、一般の方にとっては「外箱」のことだと思われることも多いでしょう。
例えば、お客様が「この腕時計のケースって、どんな感じですか?」と尋ねたとき、店員が「ステンレスになります」と答えると、「ステンレスの箱!?ずいぶん重そうだな」と驚かれてしまうかもしれません。
少し脱線しましたが、話を戻しましょう。
ファッションブランドでオリジナル腕時計を作る際は、まず「メンズ」と「レディース」という大きなカテゴリに分けるところから始まります。
メンズでは大きめのケースや重厚感のあるデザインが好まれる傾向があり、黒やネイビーなどの落ち着いた色合いで製作されることが多いです。
レディースモデルについては、以前は小ぶりなサイズが主流でしたが、最近ではあえて大きめのモデルを選ぶ女性が増えています。
その理由のひとつは「遠近感の演出」です。
1990年代に流行した「EGGポーズ」を覚えている方もいるかもしれません。
プリクラなどで両手を前に出すことで、顔を小さく見せるというテクニックです。
大きめの腕時計を着けることで手首が細く見える視覚効果を狙うという意識から、大ぶりなデザインを好む女性が増えているのです。
こうした感覚的なこだわりやスタイルへの微調整は、既製品の時計ではなかなか表現しにくいものです。
だからこそ、世界観や美意識を反映させたオリジナル腕時計を企画・製作する価値があるのです。

OEMで作るオリジナル腕時計の選び方
オリジナル腕時計を製作する際には、「どのモデルをベースにするか」を見極めることが重要です。
選定の基準はシンプルで、自社ブランドのコンセプトや世界観に調和しているかどうかが判断軸になります。
ブランドの世界観に合うモデルを探す
理想的なのは、既存のベースモデルの中にブランドイメージと自然にフィットするものが見つかるケースです。
その場合は、文字盤や針、裏蓋の刻印などデザインのディテールを仕上げていく段階に進みます。
一方、適切なモデルが見つからない場合は、OEMメーカーと相談しながら自社のブランドに合うモデルを改めて検討する必要があります。
流行を押さえる
腕時計のトレンドは、時代背景によって大きく変化してきました。
バブル期には高級志向が広まり、ハイブランドやロレックスといった王道モデルが人気を集めました。
その後、バブル崩壊を経て機能性や耐久性が重視されるようになり、「G-SHOCK」に代表されるシリコン素材の実用的な腕時計が流行しました。
注目すべきは、かつての人気モデルが時代を経て何度も再評価されている点です。
腕時計の流行は一過性ではなく、タイミングや打ち出し方によって再び脚光を浴びる可能性があります。
素材にも注目を
腕時計は、機能性だけでなくファッションアイテムとしての側面も強く持っています。
近年はステンレスやレザーといった定番に加え、カラーバリエーションが豊富なシリコンや軽量なチタンなど、時代ごとに人気素材が移り変わっています。
また、SDGsの広がりを背景に、リサイクル素材や環境配慮型のレザーを用いた腕時計も注目されるようになりました。
素材の選択をブランドの価値観と結びつけることで「ブランドらしさを体現するプロダクト」として支持されやすくなるでしょう。
OEM オリジナル腕時計製作事例の紹介

当社では、レディース・メンズはもちろん、KIDS向けまで、さまざまなブランドのオリジナル腕時計をOEMで製作しています。
ここでは製作事例をいくつかご紹介します。
amorous insense様
amorous insense様は「直感や感覚で楽しむファッション」をコンセプトに、女性の色気や強さを引き出すスタイルを提案されているブランドです。
周囲と違うファッションにも自信を持てるような、自由で芯のある世界観が特徴です。
ご依頼の背景
「あなたと幸せな瞬間を運ぶ」というテーマでの製作を希望され、数あるモデルの中から薄型の時計を採用されました。
担当者の声
検討された仕様は以下のとおりです。
- ケースカラー:金・銀の2種類
- 文字盤カラー:白・黒の2種類
- バンドカラー:黒・茶の2種類
これらを組み合わせた全8パターンをすべて製作いたしました。
| ケース | 文字盤 | バンド |
|---|---|---|
| 金 | 白 | 黒 |
| 金 | 白 | 茶 |
| 金 | 黒 | 黒 |
| 金 | 黒 | 茶 |
| 銀 | 白 | 黒 |
| 銀 | 白 | 茶 |
| 銀 | 黒 | 黒 |
| 銀 | 黒 | 茶 |
上記を組み合わせ、全8パターンを製作しました。
入稿データとしては2種類のみでしたが、製品としては8種類を展開する形です。
仕様自体は複雑ではありませんでしたが、組み合わせごとにどのパターンをどの箱に入れるかを工場で正確に識別できるよう、詳細な指示資料を作成しました。
アメカジファッションブランド様
アメリカンカジュアル、いわゆる“アメカジ”スタイルを軸に、ロックンロールやロカビリーファッションを幅広く取り扱うあるブランド様からご依頼がありました。
店主のこだわりが詰まった店舗を運営されており、ファンとの距離感を大切にした独自の世界観を展開しています。
ご依頼の背景
ブランドの世界観に合ったパロディ的な腕時計を製作したいとのことで、店主様ご自身が愛用していた某ブランドのモデルをオマージュし、自社ロゴへと置き換えたデザインをご希望いただきました。
時計の元ネタには、ある秘密結社をモチーフとした背景があり、ただの模倣ではなく、遊び心やユーモアを込めたパロディグッズとして展開する意図がありました。
担当者の声
ご希望いただいた腕時計は、市販モデルでは見かけない特殊なケース形状をしており、既存のベースモデルでは対応が難しいものでした。
そのため、ケースの設計からオリジナルで製作することとなりました。
製作にあたっては、店主様より実物の時計をお借りし、そこから鋳型を起こして形状を再現。
クォーツ式の構造であれば多くの時計が複製可能ですが、実物がないと鋳型制作ができないため、現物提供は非常に助かりました。
今回のように、既存のデザインをベースにしたオマージュ作品を製作する際は、著作権や商標に関するリスクを伴うことがあります。
弊社はあくまで、お客様から入稿されたデザインをもとに製作する下請け業者であるため、デザインそのものの合法性までは判断が難しいのが実情です。
このご依頼を受けた当時、「フランク三浦」と「フランク・ミュラー」の商標問題が話題となっていました。
パロディか否か、類似の程度、消費者の混同可能性などが争点となったこの裁判では、「外観・観念が異なる」として非類似との判断が下されました。
この案件も、まさにそういった法的議論と並走して進められたため、印象深い事例のひとつとなりました。
yu-i factory様
yu-i factory(ユーイファクトリー)様は、沖縄の「駆除ハブ」を活用してハブ革グッズを製作しています。
沖縄で唯一、ハブ革の鞣し加工からデザイン、製品化までを一貫して行うファクトリーであり、環境への配慮と地域資源の活用を両立したモノづくりを追求しています。
製品ラインナップは財布やキーケースをはじめ、女性に人気のアクセサリー類まで幅広く展開。
天然素材ならではの模様や風合いを活かしたデザインにファンも多く、全国から注目を集めるブランドです。
ご依頼の背景
「ハブ革を文字盤に使った腕時計を作りたい」というご相談をいただきました。
yu-i factory様にとっても初の試みであり、素材の特性を活かしながらも、時計としての機能を損なわない構造にできるかがポイントとなりました。
担当者の声
通常、オリジナル腕時計のデザインは文字盤の印刷を中心に行います。
しかし今回は、印刷ではなく「実際のハブ革」を貼り付けるという前提がありました。
一見すると「時計の中に何かを入れる」ことは珍しくないように思えます。
例えば、立体インデックスのある文字盤や、キャラクターや食品サンプルを目盛り代わりに使った掛け時計などがあります。
しかし、腕時計では針と文字盤の間にわずかな隙間しかないため、そこに厚みのある素材を挟むと、針が引っかかって動かなくなるリスクが生じます。
特に今回のように文字盤全体に素材を敷く場合、隙間は約0.1〜0.2mm。
この中に革素材を入れるには、精密な調整が不可欠でした。
本来であれば、針と文字盤の間に余裕を持たせた設計で、時計全体を一から作るのが理想です。
しかし、そうなるとケース・裏蓋・レンズなどすべてのパーツを一から設計・鋳型製作する必要があり、コストと納期の面で現実的ではありません。
そのため今回は、既存モデルの中から針と文字盤の間隔が最も広いものを探し出し、さらにyu-i factory様にも「ハブ革をどこまで薄く加工できるか」をご確認いただきました。
結果として、革の薄さと時計の構造が奇跡的にマッチするモデルが1つだけ存在し、そのモデルがもともと希望されていたデザインにも合致。
素材と構造、どちらも無理なく成立するかたちで製作が実現しました。

まとめ
腕時計の製造には、大きく二つの流れがあります。
ひとつはロレックスのように時計そのものを主役とする本格派。
もうひとつはシャネルのようにファッション全体を完成させるために作られるブランド時計です。
日本酒とワインの関係に例えるなら、時計メーカーの腕時計は「日本酒」。時計そのものを味わう主役です。
一方、アパレルブランドが手がける腕時計は「ワイン」。ファッションというコースに寄り添い、全体を調和させる最後の一杯のような存在です。
オリジナル腕時計をOEMで製作することは、ブランドが自らフルコースを設計し、その仕上げを自分の手で完成させることにほかなりません。
服やバッグ、アクセサリーと調和する「最後の一品」を形にできるのは、自社ブランドだからこそです。
NEW COLORSでは、その想いを実現するOEM製作を承っています。
ブランドの世界観を映す腕時計を作りたいと考えているときは、ぜひ気軽にご相談ください。