
電波時計の仕組み|なぜ正確な時刻を表示できるの?

電波時計は、電波を受信することで常に正確な時刻を表示してくれる時計です。
一般的なクォーツ時計の場合、毎月数秒の誤差があるため、時刻合わせの手間が発生します。
その点、電波時計は自動補正されるので時刻を合わせる必要がありません。
電波時計がどのようにして働いているのか不思議に思う人もいるでしょう。
この記事では、電波時計の仕組みを解説します。
INDEX
電波時計は標準電波を受信している

電波時計は、「標準電波」を受信しています。
標準電波とは、10万年に1秒程度しか誤差が生じないという、高精度のセシウム原子時計を用いた日本標準時を発信している電波です。
日本では情報通信研究機構(NICT)が標準電波の送信を担っています。
標準電波は、以下の2か所から送信されています。
- 福島県:おおたかどや山標準電波送信所(40 kHz)
- 佐賀県:はがね山標準電波送信所(60 kHz)
おおたかどや山送信所は主に東日本、はがね山送信所は西日本をカバーしています。
周波数が40kHzと60kHzと違っているのは、2つの電波が重なる地域で干渉が起きるのを防ぐためです。
電波時計の仕組み

電波時計は、どのようにして標準電波を受け取るのでしょうか。
「アンテナで受信→受信機で増幅→信号解析→自動修正」という流れです。
それぞれ詳しく見てみましょう。
アンテナで受信
すべての電波時計には標準電波を受信するためのアンテナが内蔵されています。
アンテナというと長い棒のようなものを想像しがちですが、電波時計の内部に組み込まれているアンテナはごく小さく、数センチ程度の薄い板状や線状の部品として基板に取り付けられています。
受信機で増幅
電波時計のアンテナが受信した標準電波の信号は非常に微弱なため、受信IC内の増幅器で信号を増幅しなければなりません。
その後、フィルタや復調回路で時刻情報のデジタル信号に変換されます。
信号解析
次に時計内部の「マイクロプロセッサー(小型のコンピュータ)」が信号を解析します。
標準電波に含まれるタイムコードは、1秒に1ビットの速度で60秒かけて送信される仕組みです。
時計はこの60秒分のデータを受信し、エラーチェックを行います。
ノイズや欠損がある場合はデータを破棄し、次の信号を待ちます。
自動補正
解析された時刻情報を元に、時計の表示時刻が補正されます。
自動補正のタイミングは電波が安定しやすい夜間(深夜~早朝)に設定されていることがほとんどです。
標準電波には年月日の情報も含まれているため、時間のみならずカレンダー機能も自動補正してくれます。
電波時計の時間が合わない原因

電波時計は、条件によっては時刻が合わないことがあります。
考えられる主な原因を見てみましょう。
建物の構造
まずは、建物の構造による影響です。
鉄筋コンクリート造のマンションや、外壁に金属素材(例:ガルバリウム鋼板)が使われている建物では、電波が吸収・反射されやすいため受信が難しくなります。
また、地下室や窓の少ない部屋も電波が届きにくい環境といえます。
木造住宅は電波を通しやすく、受信への影響が少ないとされています。
電子機器による影響
家電製品から発せられる電磁ノイズも受信の妨げとなります。
テレビや電子レンジ、パソコンなどの近くに電波時計があると電磁波によって受信感度が低下します。
気象条件
雷や雨、大気が不安定な状態では、一時的に電波が受信ができなくなることがあります。
天候が回復すれば正常に戻ります。
磁気帯び
アナログ式の電波時計では、磁気帯びによって針の位置がズレることがあります。
これは内部の時計は正確であっても、表示がズレて時刻が合わないという現象です。
磁気帯びはスマートフォンやパソコン、スピーカーなど磁気を発生する機器の近くで起こりやすく、一度磁気帯びしてしまったら針位置の再調整が必要になります。
故障・電池切れ
故障によって時刻が合わなくなることも考えられます。
また、電池残量が少なくなると自動受信が停止するため、補正が行われなくなります。
設定ミス
時計の設定が間違っていることが原因となる場合もあります。
よくあるのが、以下のようなケースです。
サマータイム設定
時刻がちょうど1時間進んでいる場合は、サマータイムがONになっている可能性があります。
この場合、サマータイムをOFFに切り替えましょう。
初期設定
リセットボタンを押していない、または初期設定が不完全な場合、正しい時刻を表示できません。
リセットを行うことで解消されます。
ホームタイムの設定
ホームタイムが外国都市になっていると日本で電波を受信しないため、正しい時刻になりません。
ホームタイムを「日本(東京)」に設定しましょう。
まとめ
電波時計は、標準電波を受信して自動的に時刻を修正してくれる便利な時計です。
標準電波は、セシウム原子時計を基準としているので常に正確な時間を刻みます。
電波を受信できない環境でも、内部のクォーツで動作し続けるため使用に支障はありません。
時刻が合わない場合は、ほとんどが受信環境の影響によるものです。
環境に問題が見当たらないのに時刻がズレてしまう場合は、故障や電池切れの可能性を疑ってみましょう。